電子機器の小型化推進には、導通穴加工技術が重要である。この開発に携わった経験から、私はハイアスペクト(深さと穴径の比が大きい穿孔)の技術に興味を持って来た(図参照:穴径が小さいと2回路を収納可能)。この技術は、被加工物(電子材料)と穿孔工法の組合せ模索から始まる。
その過程では、電子材料の物性と穴の深さが困難さを高める。
以下、これに類する“穿孔技術”の歴史を探ってみる。最も古いと考えられるものに、インダス文明(特にハラッパー期:紀元前2600~1900年)での、カーネリアン・ビーズ(紅玉髄:宝石の一つ)に対する直径1ミリ以下の穿孔がある。
当時の交易で、この宝石はメソポタミアやエジプトに輸出された。従って、クレオパトラの魅力を高めるのに一役買ったに違いない。この穿孔には、回転式の手回しドリルが使われた。この技術は既にインダス文明の前段階から考案されていた。ドリル・ビットの素材は、チャート、アゲート、さらに工具の先端には金属材料も使われていた。さらに、発熱と摩耗を抑える為に、石英粉の研磨剤も併用された。この加工には、熟練工での量産体制が整備され、安定した品質の輸出体制が整備されていたそうだ。そして、その後西アジアや東南アジアにも伝搬し、日本の“メノウ”や“ヒスイ”製の“勾玉(まがたま)”等の神具作りにも使われ、卑弥呼の首も飾った事だろう。
次いで、良く知られたものに、インカ帝国の遺跡(紀元前500~1500年)での水道管の例が見られる。これは、10メートル以上の安山岩や花崗岩などの、自然の巨石を直線的に貫通したものである。この具体的な工事方法は不明とされている。棒の先に研磨粉をまぶして、それを神業の如き忍耐力で掘進したのだろう。この場合は、穴径3センチで、長さ10メートルで、アスペクト比は300を超える。
以後は近代の例だが、先ずは銃器の弾道加工である。これには1948年に確立したとされるガン・ドリルが使用された。長い銃身に先端から切削油を入れ、切子を排出しながら穿孔する。この場合のアスペクト比は最大が100程度である。
さらに原油掘削や、温泉や海底資源調査の垂直方向の掘削技術が有る。相手が数百メートル以上の岩盤への穿孔で、切削工具や駆動力伝達システムの技術は、長い経験に取り巻かれている。
その他、穴径の微細化に対しては、電子ビームやレーザーが実用されている。これらの特殊な穴明け技術には、部外者には無縁の多くのノウハウが有ると言われる。
おわりに自然薯(じねんじょ)掘りを紹介する。猪の出る様な山野に入り、大きい物では、長さ2メートルにも達する自然薯を、折らずに掘り上げる。田舎の幼馴染は、工具による廃土(切紛)排出処理に“技”を持ち、30センチ径の垂直穴で張り上げる。この場合のアスペクト比は6にも達する。自然薯掘りは機械化の価値は無く、挑戦心を刺激する。
