コミュニケーション向上による業務推進の取り組み

―工場内での業務依頼書の事例として―

 

皆さんは、社内で業務を依頼される場合は、どのような方法で依頼しているでしょうか。業務を依頼する際は、コミュニケーションをとる必要が生じます。従来は、口頭および書面での依頼が多いと思います。最近は、ITを活用した依頼としてE-mail等での依頼が多いでしょう。

 技術士の資質能力(以下、PCと示す)の1つに、コミュニケーション能力の項目があります。技術士二次試験では、PCのコミュニケーションを含めた審査をします。試験でのコミュニケーション能力の審査として、具体的には「書面(論文)」および「口頭」によるコミュニケーション能力を試問されます。

私も技術士二次試験を受験する際は、書く内容としてキーワードを充実すること以外に、文章表現を向上させることに取り組んできました。この取り組みは、技術士二次試験の受験に限定せずに、日々の業務にも取り組み、受験対策してきました。

以下は、私が日々工場で試験を依頼することがあり、関係者に「業務依頼書」を発行して取り組んでいる事例を述べています。このコラムを見ている方の中には、技術士二次試験を受験される方もいるかと思います。技術士二次試験対策および業務推進に際して、良いところがあれば活用いただければ幸いです。

 

1.業務依頼目的の明確化

 業務を依頼する場合は、目的を明確化する必要があります。目的が不明確であると、業務を依頼された方が「何の意味があるの?」、「必要なの?」、「思い付きですか?」と思われます。そうなると、「今忙しいから、対応できない」等と言われます。そのようにならないためにも、目的を明確化することが必須です。

私は、目的を明確化するために、まず「タイトル名で明確化」するようにしています。タイトルは、業務依頼書本文の内容が凝縮されるものです。このタイトルに「目的」を含めて「読んでもらえるタイトル」を意識して記載しています。タイトルに目的が記載されていると、特に日々問題を抱えている現場作業者が見ると興味を示し、読んでいただけることが多い傾向にあります。これを読まれている皆様は、E-mailを使用される方が多数と思います。1日に何件ものE-mailが来ると、自然とタイトルだけを見て優先度を決めている方もいます。技術士二次試験の論文も、タイトルの内容次第で、優先的に読んでもらえる確度が高くなり、評価が上がる可能性あるとも言われます。

次に、業務依頼書本文の前書きで、「業務依頼する背景および問題点」を述べています。依頼背景および問題点を述べると課題が明確になり、課題解決の1つとして「実施目的」につながります。

 

2.読み手に合わせた文章を書く

 業務依頼書を書く際に、「この業務依頼書は、誰が読み、誰が作業するのか」を意識しています。特に、「業務依頼書」を読んで作業される方がいる場合は、その作業者レベルを対象とした内容とする必要があります。読む方のレベルに合わないと、「読んでも分からない」、「この内容では作業出来ない」と言われます。その結果、業務が滞ります。

 読み手のレベルに合わせた文章を書くのは、ある意味大変な作業です。しかしながら、その手間を惜しんだことで、結果的に作業開始までに時間を要することとなります。

 

3.理解しやすい文章を書く

 これは、業務依頼書に限ったことでは無いですが、文章を書く際は「一義的に理解できる」内容にしましょう。1文にいくつものことを書くと意味不明な内容となり、間違った作業をされることがあります。そうなると、依頼内容がムダとなってしまいます。業務依頼書の内容によっては、作業手順を記載することもあります。その場合は、「一文一作業」とするようにしています。

 私は、技術論文の執筆および技術士二次試験を受験する際にも、この点を配慮しています。「一文一義」となると、意外と文章がくどい印象を受けます。しかしながら、理解されないと間違ったこと(間違った作業)となり、結果的に時間を無駄にします。

 

4.事前に業務依頼書案として配布

 「業務依頼書」を作成した後に、「案」として関係者に事前配布しています。私の所属する工場は、4直3交代で24時間稼働しております。そのため、勤務日により昼間不在となるために、資料の事前配布にE-mailを活用しています。事前配布する際(E-mailの文章)には、「ご意見、ご質問があれば、ご連絡下さい」と述べています。この事前配布の目的は、特に現場作業者からの意見を集約することです。意外と私を含めたスタッフが知らないことを引き出せることが多々あります。

 

 皆様も、ぜひコミュニケーション能力を向上させ、技術的発展に寄与下さい。

 

(高橋)